ミカンの皮に含有されるノビレチンという成分の薬効研究について

 

日本薬局方の陳皮は温州ミカンなどの果皮を起源としており、また、神農本草経にも辛温の気剤として収載されています。(八十七:橘油) 特有の芳香は軽い気の滞りを解消し、消化機能の低下した状態を賦活する芳香性健胃剤として作用する他に鎮咳、利尿、熱気を取り去ると示されています。生薬の本草書の解釈は作用が大変多岐に及びますのでかなりの経験が必要ですが、陳皮の利尿作用は胃に作用して、いわゆる胃内停水が取れ、水を排泄し、胃が元気になるという考え方です。

しかし、最近の研究は先人たちの長い経験から実効を得た範囲を越えて合成の医薬と同様に単一の化合物として新薬に無い多面性のある薬効が裏付けされて来ています。

 

ノビレチンの保護作用

神経系への作用

以前に『抑肝散加陳皮半夏』が実験的アルツハイマー型認知症(AD)に有効ということを紹介したと思います。特に陳皮の中のノビレチン単独でなく、類似の化学構造を有するタンゲレチンやセナンセチンの混合物がより有効なのです。そして、その後の研究でノビレチンは神経毒を示すβ-アミロイド物質(Aβ)の前駆タンパク質を損傷させたり、ネプリリシンというAβを分解する酵素を増やしたりと多くのAD症状の改善モデル実験が報告されています。
また、パーキンソン病(PD)に対しての有効性はPDを誘発する薬物を用い、その有効性が詳細に報告されています。 グリオーマと言われる神経の出来る初期の神経細胞の腫瘍に対してもノビレチンの有効性が作用機作と共に報告されています。また、うつ病改善効果についても研究がなされています。

 

心血管系・呼吸器系・消化器系や骨への作用

神農本草経で薬効の知られている消化器系、泌尿器系、さらに呼吸器系への最近の研究ノビレチンによる脂質、糖の代謝を改善し消化不良、肥満、高血糖、インスリン抵抗性の改善、さらに大腸潰瘍の慢性炎症への有効などを図にまとめてみました。

 

【ミカン果皮粉末】について

七味唐辛子に処方される陳皮は主として温州ミカンの果皮です。通常の温州ミカンの果皮には50~60mg/100g(乾物)のノビレチンが含有されています。しかし、東南アジアには果皮にこれの10倍以上500~1000mg/100gのノビレチンを含有する“ミカン”があります。イギリスに古くからFudge(ファッジ)という黒砂糖ベースの駄菓子があります。胡麻やこの“ミカン”の皮、チョロギ、山薬などで特に認知症にかからないためのFudgeを造る計画でいます。ノビレチンなどが高含有の“ミカン”の皮を七味唐辛子のように様々な食材・料理に振りかけて”5g/1日以上摂取する事で、細胞の老化による機能低下を抑制してくれるようです。

 

 

 

薬剤師・医学博士 山原 條二

 

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