はしか(麻疹,Measles)の流行と予防接種について

 

空港や百貨店など多数の人が集まるところだけでなく、新幹線内も「はしか」の伝染源となっています。「はしか」の病状を少し解説しますと、ウィルスによって侵される組織は呼吸器系と他の細胞内の細網内皮系といわれるところです。大変、伝染性が高く、感染している患者の唾液などのウィルスを吸入後、約8日目から鼻風邪様の症状が現れ、頸部リンパ腺が腫れてきます。

「はしか」と予防接種


風邪にかかった様な症状を示すこの時期に、口腔粘膜にコプリック斑(Koplik’s spot)といわれる輪郭が不整で小鮮紅色の斑点が出現します。中心部は青白色の特徴あるものが見られたら、間違いなく風邪ではなく「はしか」です。
また、眼瞼結膜炎、物が光って見難い、筋肉痛、だるさ、発熱と咳の後に皮膚に発疹が現れます。その場所も耳の後ろや顔にまず出現し、全身に広がります。この発赤はだんだん集まり、次第に患部が平らになると褐色となって、6日位でカサブタが落ち、そうすると体温も平温となります。その後、細菌性肺炎、中耳炎、腸炎などの合併もあり、死亡例も多い病気です。やはり、「はしか」はワクチンによる予防が優れています。

ワクチンが発見される以前は、漢方療法で対応出来たのは一部の人で、自然治癒、神頼みの病気であったようです。症状から処方を決定しますが、百日咳やおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)に用いられた処方もあります。やはり漢方療法よりも予防接種を優先にする病気だと思います。 同じくウィルス感染し、予防接種が有効な風疹の流行が日本で問題となっているのは、30~50代の男性が予防接種の制度変更の為に、免疫を持っていない人が多く、風疹流行の媒介者となってしまう点にあります。

妊婦が妊娠の初期に感染すると、心疾患、難聴、白内障などを先天的に持つ風疹症候群の子供が生まれる確率が大変高くなります。

 

予防接種とは

対象となる疾病の発症の予防の為に有効と認められているワクチンの接種を言います。予防接種法によって定期接種と任意接種があり、一般に自治体が多くの場合、無料で行います。任意の接種は個人の全額負担で行っていますが、ワクチンによっては一部、あるいは全額を自治体が負担する場合もあります。 ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、麻疹(はしか)、風疹、水痘、日本脳炎、BCG、インフルエンザ菌b型(ヒブ)、肺炎球菌、ヒトパピローマウィルス、B型肝炎のワクチンは定期接種ワクチンで、おたふくかぜ(ムンプス)、ロタウィルスのワクチンも検討されています。三種混合(DPT)はDiphtheria(ジフテリア)、Pertussis(百日咳)、Tetani(破傷風)の混合ワクチンを、四種混合は(DPT+IPV)で三種混合にInactivated polio vaccine(不活性ポリオワクチン)を加えたものです。

国立感染症研究所感染症疫学センター予防接種情報(https://www.niid.go.jp/niid/ja/vaccine-j.html)より

 

ワクチンの種類と安全性、有効性について

弱毒性ワクチン

細菌やウィルスを数代培養を続ける(これを継代培養といいます)中で毒性や病原性の低下した細菌やウィルスをそのまま用います。日本では麻疹、風疹、水痘、おたふくかぜ、BCG、ロタウィルスなどです。効果はよく出ますが、免疫不全者や妊婦への接種は胎児への影響を考える必要があります。

不活性ワクチン

細菌、ウィルス、毒素などを加熱したり、ホルマリンで処理したりして、感染力や毒性を不活化、抑制したものです。弱毒性ワクチンよりも安全性が高いのですが、免疫の誘導に複数回の投与やワクチンの効果を助けるadjuvant(アジュバント、ラテン語の「助ける」の意味adjuvareから)の添加の必要な物も多いです。アジュバントとして多用され、古くから知られているのが水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩です。ジフテリア、B型肝炎、肺炎球菌(PCV13)、破傷風、百日咳、ヒトパピローマウィルスなどに用いられています。しかしながら、アルミニウム塩の添加により、アトピー性アレルギー誘発に関与するIgE血症のみならず、接種部位の硬結、疼痛、腫脹なども問題となります。

はしかに罹患しない為には、日頃から食養生の重要性を意識して外来の異物を除去してくれる体内の防御系が弱らない様にしておくことと、必要に応じてワクチンの接種もありますが、手洗いやうがい、鼻腔の洗浄なども積極的に実行することと考えます。

 


薬剤師・医学博士 山原 條二

 

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