【漢方褒貶】漢方療法が今、必要なわけ ―特に産婦人科疾患に対して―

漢の時代に集大成され、その後、金・元時代に沿った療法も追加された漢方療法は主として湯液の部分である、いわゆる煎じ薬です。しかし、煎じ薬を直接調剤するところは非常に少なくなっています。生薬の保管や生薬の見立て、さらに匙加減など広い経験が必要なこともあります。
女性の冷えやすい生活習慣と環境、自然の法則に反する生活リズム、冷房や冷蔵庫の普及、動かなくても生活できる交通手段やネット社会など現代社会でこの漢方療法の必要性を感じます。漢方療法は現代社会の崩れたバランスをより自然に近づけ、病気を治してくれます。


最近経験しました冷えを改善して不妊治療がうまく行った例を紹介します。女性の不調の原因は冷えによる血虚と瘀血、血が足りない状態と血の巡りの悪い状態の改善にあります。
ミャンマー国マンダレー近くで、私共の生薬を集荷してくれている若者の妻(30代前半)で、主訴は手足の冷えと生理痛、生理不順で、挙児希望しますがうまくいかないという状態でした。昨年6月マンダレー訪問時に望診しますと、顔色は張りが無くくすんでおり、眼の下の隈取りと冷えと瘀血の症状がこんな熱帯でもあるのはやはり食生活と住生活の変化かと感じました。
結婚後、タイミングを見ているが、妊娠しないとの申し出で全体のイメージとして安胎の薬としてよく知られている「当帰芍薬散」を帰国後に送る事にしました。勿論、「当帰芍薬散」は生薬の粉末を処方した物で煎じ薬では効果は少ないものですが、手元にはこれを丸剤とした「当帰芍薬丸」がありますので、服用してもらうことにしました。

10月に訪緬時も2ヶ月分、12月の訪緬時にも2ヶ月分を渡し、真面目に服用している様で顔色が少し明るくなったのが感じられます。少しずつ、不調が改善されているのがわかってきている様子でした。服用後、6ヶ月経過した3月10日、メールが来ました。妊娠2ヶ月とのこと。継続して服用すると出生児も親も元気で過ごせるのがこの「当帰芍薬丸」である旨をメールしたところです。

西洋医学には全く無い「温める、補う、巡らす、潤す」という概念で婦人科疾患を治すのは漢方療法にしか出来ない技と言えます。

薬剤師・医学博士 山原 條二

 

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