漢方薬の剤形について

漢方薬は主に「湯(とう)」「散(さん)」「丸(がん)」という3つの剤形(薬の形)があり、そしてそれがお薬の名称(処方名)にもなっています。
一番多いのは「葛根湯(かっこんとう)」など「湯」のつくもので、水で煮出してつくる、所謂「煎じ薬」です。

現在、保険調剤や一般に販売されている顆粒、細粒、錠剤などの漢方薬のほとんどは、
水で煮出した液を濃縮したものに乳糖やトウモロコシデンプンなどの賦形剤を加えて顆粒や細粒や錠剤としたものです。
昔ながらの「煎じ薬」がサイフォンで入れたコーヒーなら、これら顆粒、細粒、錠剤などはインスタントコーヒーのようなものと言えます。
コーヒーをサイフォンで入れた時は、作っている間その香りも楽しめます。
煎じ薬も、煎じている間の匂いを嗅ぐ時から治療に入っているとも言われています。
手軽で、持ち歩きも出来る顆粒や錠剤などは便利なのでしょうが、

時には自分で煎じてみて、
煎じている間ゆったりと自分のからだと向き合う時間にしてみたり、
効果の違いを試してみたりというのもいいのではないでしょうか?

 

意外と飲みやすい!!漢方薬は「良薬は口に苦し」などといわれ、飲みにくいイメージがありますが、

「甘草(かんぞう)」や「大棗(たいそう)」など甘味のある薬草などもよく使われ、意外と飲みやすいものが多いです。
また苦い薬草でも、体質や症状に合い、からだが欲しているものは、かえって美味しくすんなり飲めたりして、
漢方の専門家の間では「良薬は口に甘し」が常識となっています。

煎じ薬用の薬草も煎じる前は、冷蔵庫で2~3年は保存できますので、
風邪薬の「葛根湯」や「麻黄湯」などは是非煎じ薬用のものを常備し、試してみてください。

当薬局では煎じ薬は1日分からでもお作りし販売しております。

また自分で煎じるのはどうしてもできないという方も、
せめて「葛根湯(かっこんとう)」や「麻黄湯(まおうとう)」など風邪の時に飲むお薬は、顆粒や細粒を飲む時でも、
それこそインスタントコーヒーのようにお湯に溶かして飲む方が、体も温まり良く効きますので是非試してみてください。

 

処方名に「丸」や「散」が付くお薬は、薬草の粉末をそのまま用いたもので、
「散」はそのまま粉末で、「丸」は粉末を蜂蜜やコメデンプンなどで丸剤として固めたものです。

「五苓散(ごれいさん)」や「八味丸(はちみがん)」など処方名に「散」や「丸」の付く処方を
「五苓散料(ごれいさんりょう)」や「八味丸料(はちみがんりょう)」などという名称で、顆粒や錠剤が販売されておりますが、
漢方医学の出典にある「五苓散」や「八味丸」とは似て非なるものですので、
出典に記載されている効能効果の100%は期待するのは無理というものです。

と言いますのは、薬草の成分には、ビタミンに水溶性と脂溶性があるように、
水に溶けるものと水には溶けないものがあり、水に溶けない成分は、
煎じ薬やそれを濃縮してつくられた顆粒や錠剤には、ほとんど含まれないからです。

たとえば、急須でいれたお茶と抹茶では、水溶性ビタミンのビタミンCはどちらにも含まれますが、
脂溶性ビタミンのビタミンEは急須で入れたお茶にはほとんど含まれません。
抹茶を飲むとビタミンEが取れるので、茶道をする女性はいつもでも若々しく元気、などと言われたりしました。
それはもちろん抹茶を飲むだけではなく、生き甲斐や、楽しみを持つ事など、いろんな要因はあるとは思いますが、
昔ビタミンE系のサプリが流行った頃、盛んにそんな事が言われたりしました。

このように古い医書に記載されている剤形には効果を得る為の長年の知恵が含まれており、
現代の化学でも根拠のないことではありませんので、おろそかにしないようにしたいと思います。