今回の相談者は20代の男子、最近転勤し夜勤もある職種の方です。
アトピーの皮膚炎で顔も赤く掻痒も激しく、これまでステロイド剤の塗布で凌いできたが治らないとの主訴でした。
ステロイド剤からの離脱には、かなりの月日がかかるのが普通で、さらにその使用期間が長いほど困難になります。それは免疫系が薬物によって破綻しており、その修復に時間がかかることが原因です。望診から仕事にストレスがありそうなことも読み取れます。問診では特に食事内容や仕事内容に重点を置いて詳細に聞きます。まず炎症による体の火照りから冷えたソフトドリンクの多飲と偏食がこの疾患の原因にあることがうかがえます。元々食養生には無関心なことと、自立して物事の判断がまだ充分に出来ていない青年の教育から始めるという手古摺る患者さんです。
エネルギーの補給だけが食事ではありません。家族とのコミュニケーションも大切ですが食事の内容も重要であり、アレルギーの素となる蛋白質の摂取は症状が収まるまで抑えておく必要があります。また、体を温め巡りをよくする事も基本的ですが重要なことです。さらに仕事で体内時計(サーカディアンリズム)が狂ってしまっているのも大きな原因であり、これら全てを克服できるかが心配です。
食事療法は薬物療法よりも重要であるということを説明しました。まず赤い顔面のアトピー性の発疹、搔痒を伴った症状を治すために、いかにステロイド剤の塗布を減少させていくかが問題です。食養生を積極的に進めてくれそうでないことも心配の要因です。煎じ薬を指示通り服用してくれるかも不安です。まず服用し続けられるか不安に思いながら、“三物黄芩湯(さんもつおうごんとう)”という処方を煎じ薬でお出ししました。すると一週間後、苦くてなかなか飲めないと残念ながら心配は的中し、少しは服用しやすい“温清飲(うんせいいん)”の顆粒を出して様子をみているところです。
免疫系は外来や体内で発生した異物の処理だけでなく、これを消化・吸収・代謝・排泄する全システムのどこかがうまくいかないと自己免疫の疾患やアレルギー、アトピーなどの症状が出てきます。ですから、体全体の巡りの回復が重要だと考えています。
薬剤師・医学博士 山原 條二
本記事は認定特定非営利活動法人 天然薬用資源開発機構の承認のもと、転載しております。
天然薬用資源開発機構では自然に根差した健康造りの情報を他にもたくさん発信しております。
天然薬用資源開発機構のホームページを是非ご訪問ください。
http://www.tenshikai.or.jp/