うつ病の病状は抑うつ的な気分や、物事に対しての無関心、喜びの低下、物をやる意欲、精神的にも全体が低下してしまう疾患です。
感染症の様に原因が特定されているわけではありません。
モノアミン仮説とは
現代、主として西洋医学で用いられている医療用の薬剤は〝モノアミン仮説〟に基づいて開発された物です。
〝モノアミン〟という物は脳内の神経伝達物質で、化学構造上-NH2アミン基を有し、それも一つだけ持っているので、その様に呼ばれています。ですから、ノルアドレナリンやアドレナリンの化学構造式の特徴から総称してモノアミンと言います。
古い高血圧の医薬品で生薬のインド蛇木(キョウチクトウ科)の根から抽出されたレセルピンという物があります。この化合物は血中のノルアドレナリンの濃度を減少させる事によって血管収縮を抑制して、その結果血圧を低下させる事がわかっていました。同時に一部の患者にうつ状態が誘発され、ノルアドレナリンの減少がうつ病の原因ではないかと考えられました。モノアミンを増やすという作用機作を市販の抗うつ薬はすべて有している事になります。しかし、色々の報告をみても、うつ病が治ったというものに出会うことはありません。作用が寛解した、少し緩和した、全く無反応か、それぞれ1/3ずつで、症状は抑制しますが、治るものは無いという事になります。という事は〝モノアミン仮説〟に立脚した理論が不完全という事です。全く無意味な療法ではありませんが、この仮説に基づく抗うつ剤の使用は限界に達しています。うつ病患者の病態が精査され原因の解明は簡単とは思われませんが、進められています。その進捗をただ眺めているだけでなく、単に脳神経やホルモンの異常だけでなく、本人の日常の後ろ向きな考え方や生活習慣、性格、過去の心的傷害が誘因となっている事も間違いないので、日頃の精神療法や行動療法も重要であると考えると共に、漢方療法も紹介したいと思います。
漢方療法の紹介
香蘇散(香附子、蘇葉、陳皮、生姜、甘草)という漢方の煎じ薬のエキスと、うつ病に頻用されるmilnacipran(商品名:ルジオミール)との効果を比較し、香蘇散エキスの方が優れている結果が報告されています。他に漢方薬では、うつ病には竜骨湯や半夏厚朴湯も用いられています。竜骨湯(竜骨、茯苓、桂枝、遠志、麦門冬、牡蛎、甘草、生姜)半夏厚朴湯(半夏、茯苓、生姜、厚朴、蘇葉)で処方されていますが、今後の詳細な研究は、陳皮のポリメトキシフラボンなど脳の老化抑制に有効である情報を提供してくれた様に、天然物には将来を期待させる病気を治すという効果を秘めていると思いたいです。
薬剤師・医学博士 山原 條二
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