
山 原 條 二
フィンランド・ヘルシンキ大学の内科グループが発表した論文※に注目するものがありましたので紹介します。
結論は、アセトアルデヒドの体内濃度の高い喫煙者や飲酒者は、口腔・食道・咽頭など上部消化器癌の発生が高くなります。
消化器の中にいる微生物によって産生されるアセトアルデヒドが発癌リスクを高めていることが確認されました。このアセトアルデヒドを消去する機能の低下している人が、消化器癌の発症が大幅に増加することは日本人の研究者によって確認されました。このアセトアルデヒド消去能の低下した人は、唾液中のアセトアルデヒドが少量の飲酒後でも通常人の2~3倍に達しています。
上部消化器癌の最大80%は喫煙や飲酒に、また胃癌の危険因子とされている萎縮性胃炎や無酸症にアセトアルデヒドが関与しているとされています。このアセトアルデヒドをアミノ酸の一種L-システィン(シスチン1分子から2分子のシスティンが得られる)が、消去してくれることが確認されました。
アセトアルデヒドは喫煙や飲酒のみならず、糖分や炭水化物を多く含む食品からも産生されるので、常々解説しています様にバランスのとれた食事が大切です。それではL-システィンの多い食品や調理法について検討します。
「焼き魚を食べると癌になりやすい」
といったイメージを持っている方は多いと思います。魚にはL-システィンやメチオニンという硫黄を含有するアミノ酸が豊富に含有されています。
食品成分表の各種アミノ酸の加工法に対する安定表を図に示しました。メチオニン・シスチン・システィンは焼き魚にすると古くなって、過酸化脂質のできた状態で大変分解されやすいことを示しています。アセトアルデヒドと胃癌の関係もあると思います。焼き魚も大変おいしいですが、焼きすぎが問題です。この発癌原因物質をL-システィンが消去してくれるのですから、適度な焼き加減にするとか煮物にしてL-システィンの残った状態で食べるとよいと思います。
酢の物は宜しいが重曹などで晒すこともL-システィンの分解促進になると思われます。
胡麻やナッツ類、海藻、麩、納豆などの大豆製品はL-システィン、シスチンの多い食品です。
※Ville J.らCancer Epidemiol Biomarkers Prev, 146-149, 15(2006).

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